本プロジェクトのねらい
半導体量子構造や複合欠陥のスピン状態を高度に制御し、半導体集積化技術やフォトニクス技術との融合を見据えた量子状態の精密制御や異種物質接合の構造解析・量子物性に関する研究を推進します。
さらにスピンの空間構造に基づく新たな情報担体である電子スピン波やその量子スピン物性に着目し、次世代量子情報デバイスに向けた新規物性開拓と機能創発を目指していきます。
Project
ダイヤモンドNVによる局所磁場計測及びSiC中シリコン空孔(VSi)によるSiCパワーデバイス局所診断の実現
(量子センシング研究)
電子及び局在磁気モーメントの空間構造を活用した新奇物性開拓やスピン・量子機能の創成
(ヘリカルスピントロニクス研究)
原子層材料におけるバレー自由度を利用した量子機能やスピン機能の開拓と量子技術応用
(量子バレートロニクス研究)
ワイドギャップ半導体中スピン欠陥を用いた量子センサ研究
量子センサはワイドギャップ半導体中に形成したスピン欠陥と呼ばれる特殊な欠陥が持つ電子スピンが周囲環境に非常に敏感に反応することを利用して、磁場や温度等の様々な物理量を高感度・高空間分解能で測定可能な新規センサです。
ダイヤモンドや炭化ケイ素といった3次元材料に加えて窒化ホウ素などの2次元材料を母材する新規スピン欠陥の探索研究を行うとともに、将来のトリリオンセンサ時代を支える基盤技術を目指して、既存/新規スピン欠陥を用いた量子センサの高性能化に関する研究を行っています。
ヘリカルスピントロニクス研究
半導体量子構造のスピン軌道相互作用に基づく有効磁場を精密制御することで、スピン緩和の抑制とスピン空間構造の安定化を両立できる永久スピン旋回状態を活用します。
安定状態となる電子スピン波の生成・制御・検出技術を確立することで、波の多重性や並列性を活用した次世代量子情報処理に向けた古典-量子融合を目指します。
電子スピン波物性の舞台となるIII-V族半導体量子構造から原子層物質などの磁気伝導や時間空間スピンダイナミクスを明らかにし、量子未来社会を支える基盤技術を構築していきます。
原子層スピンセンシング研究
高空間分解かつ高感度にスピン情報を検出可能なワイドバンドギャップ半導体中のスピン欠陥を使って、近年、光スピン生成やスピン流制御の舞台として注目を集めている2次元原子層物質中のスピン情報を空間的にセンシングする研究を行います。
スピン情報の空間分布の可視化は、量子未来社会を支える超低消費電力の磁気メモリなど、スピンを利用した様々な新デバイスの開発に役立つ技術になることが期待されてます。
スピン流を活用したスピン欠陥制御
新規量子機能材料の探索
量子制御技術の社会実装につながる新規の量子機能材料を開発します。高エネルギーイオン照射法や表面科学手法等を用いることでワイドバンドギャップ半導体として利用可能な新規二次元物質の創製を目指します。
同二次元物質の原子構造や電子状態を明らかにするとともに,原子構造を制御することでスピン欠陥の生成および電荷状態の制御・安定化を実現させ量子機能性を発現させます。
さらに二次元物質の大面積化を達成することで微細加工を容易にさせ,デバイス開発に必須となる微細形状の自在な形成を目指します。
Missionm01
スピン・量子・光技術の高度な融合
東北大の有する世界的なスピントロニクス・材料科学の研究活動と量研(QST)が有する高精密な量子ビーム技術に基づく量子マテリア ル・量子機能創製を高度に融合できる協創ラボを、東北大学内に設置することにより、スピントロニクス・材料科学・量子技術の枠を超えた研究成果を生み出す拠点を形成します。
協奏拠点は東北大学内の片平地区および青葉山地区に設置することで様々な分野の研究者と連携できる場を形成し、量子技術に関わる共同研究を加速的に進めます。
Missionm02
量子未来社会の構築
本共同研究拠点においても、量子センシング、量子機能創製等、世界を先導する量研とスピントロニクス研究や量子材料研究で世界トップレベルのシーズを有する東北大学の研究ポテンシャルを最大限に発揮し、量子技術、スピントロニクス、材料科学の枠を超えた共同研究、量子人材育成における協奏を加速的に展開し、量子未来社会の構築に貢献していきます。
東北大-量研の連携による量子材料科学の展開
東北大学と量子科学技術研究開発機構は、2016年に組織的包括連携協定を、さらに2020年には次世代放射光施設の整備・利活用に向けて放 射光科学に特化した協定を締結し、次世代放射光利用研究、次世代人材の育成を推進しており、2022年度からは「量研-東北大学マッチング研究 支援事業」(10課題)を開始しました。 今般、双方が強みを有し、国家戦略「量子未来社会ビジョン」も策定された「量子技術」において、これまでの連携実績を基盤とした協創ラボを設置し、 量子技術・量子デバイス創製による量子未来社会の実現を目指します。
量子技術・量子デバイス創製による量子未来社会の実現
東北大-QST量子材料協奏拠点(協創ラボ)
「ミッション」
東北大の有する世界的なスピントロニクス・材料科学の研究活動と量研(QST)が有する高精密な量子ビーム技術に基づく量子マテリア ル・量子機能創製を高度に融合できる協創ラボを、次世代放射光施設NanoTerasuが立地する仙台(東北大学内)に設置すること により、スピントロニクス・材料科学(水素科学)・量子技術の枠を超えた研究成果を生み出す拠点を形成します。